mistake (特別編~二人暮らし)
「チャンミン、・・・チャンミンっ・・・起きて?」
「・・・・んー、・・・煩いなぁ・・・」
「チャンミン、遅刻するよ?」
「・・・ゃぁ・・・っ、・・・もう少し・・・」
誰かが僕の体を揺すって起こす
きっと、これは夢だ
だって、僕の名前を呼んで起こしてくれる人なんていないもの
ずっと一人暮らしで、朝僕を起こしてくれるのは、目覚まし時計と携帯のアラーム
こんなふうに優しく名前を呼ばれて
心地良い揺れを感じながら目覚めるなんて・・・まるで恋人同士のようだとか
----恋人?
「・・・・・っ、」
「起きた?
ごめんね、気持ちよさそうに眠ってるのに、毎朝起こしちゃって」
「・・・いえ、僕の方こそ・・・いつも起こしてもらってすみません」
「いいよ、・・・半分は俺のせいだしね?」
恋人、という響きに反応し、がばっと布団を捲って飛び起きる
すると、目の前には、少し困り顔でベッドサイドに腰かけるユンホさん
そう・・・僕は、もう一人暮らしではなかったんだ
ユンホさんのマンションに引っ越して・・・・同棲を始めたのだ
そして・・・毎朝寝惚けて、ユンホさんを困らせている
「チャンミンの寝相・・・可愛いよね、赤ちゃんみたいに万歳して・・・足開いて」
「・・・恥ずかしいから、見ないでください」
「じゃ、今日から別々に寝る?」
「・・・どうして・・・っ」
僕は、自分でも几帳面で神経質だと自覚しているけれど
実は・・・朝が弱いのだ
以前から、目覚まし時計を複数セットし、携帯のアラームも5分おき
それで、ようやく起きるレベル
ユンホさんの一日は、僕を起こすことから始まるのだ
そして、寝相が可愛いとか・・・寝顔が可愛いとか
毎朝、僕を観察して楽しんでいる
「一人は嫌です・・・・せっかく、一緒に暮らしているのに・・・」
「そうだね、俺も一人は嫌だよ?チャンミンと一緒がいい」
「・・・・ん・・・・っ、・・・」
ユンホさんに起こしてもらい、ベッド上でおはようのキスを交わし
甘い・・・甘い時間を過ごして、一日が始まるのだ
「ユンホさん、ネクタイ曲がってます・・・直しますね?」
「うん、お願い」
「ユンホさん、スマホ忘れないでください、充電しておきました」
「ありがとう」
慌ただしいはずの朝も、お互いの世話を焼きながら出かける準備をするのは幸せだ
ユンホさんの優しさに包まれて・・・守られて
少しずつ、自分を曝け出せるようになった
どんな僕でも、丸ごと受け止めてくれるから
「な・・・・っ、これ・・・」
「可愛いだろ?ベストショット・・・俺のお気に入り」
「やめてくださいっ、・・・恥ずかしい・・・」
ユンホさんのスマホを充電器から外すと、画面いっぱいに僕の寝顔が表示される
ロック画面も、待ち受けも・・・
僕の寝顔を設定していると知らされ、唖然とする
「チャンミンが大好きなんだよ、俺」
「・・・・それは・・・」
「チャンミンもそうでしょ?」
「・・・・大好きです」
ユンホさんに問われ、こくんと頷く
僕のスマホにも、ユンホさんの画像がたくさんある
ユンホさんみたいに、僕を隠し撮りするのではなく
本を読んでいる姿、パソコンに向かっている姿
僕に向ける笑顔
日常の全てを収めている
そして、一日に一度は必ず・・・スマホをぎゅっと握りしめるんだ
ユンホさんと出会たきっかけは・・・このスマホだから
「チャンミンは、普段しっかり者なのに・・・寝ている時のギャップが可愛いよね」
「それは・・・言わないでください」
「チャンミンを知れば知るほど好きになるよ」
「・・・・僕だって・・・」
朝、なかなか起きられないのは・・・
ユンホさんが自分でも言っていたけれど
ユンホさんが毎晩、僕を離してくれないからだ
けれど、口下手でつまらない男である僕と一緒に暮らし、
嫌気がさすどころか、どんどん好きになる・・・なんて
こんなに幸せでいいのだろうか?
「そろそろ行こうか」
「はい」
毎朝、それぞれの職場へ出勤し
夜になると、同じ家に帰る
僕の居場所を作ってくれたのは、ユンホさんだ
この幸せが、ずっと続けばと願う
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